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スタッフ通信

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里山ノスタルジア2015年12月1日


私事ですが、自然番組の制作に携わり、丸3年が経ちました。
この機会に制作を通じて考えていることをお話してみます。

みなさんは、新美南吉さんをご存知ですか?
「ごんぎつね」や「手袋を買いに」といった作品を描いた作家です。
小学校の教科書にも載っているので、
作品だけなら分かる、という方も多いのでは。
新美さんは幼くして親をなくし、寂しい幼少時代を過ごした経験から、
心の通い合いをテーマにした作品を世に送り続けたと言われています。

前出のきつねが出てくる2作品が、昔からとても好きでした。
人とケモノが共存する難しさや、美徳、悲哀などに心打たれます。

数年前から担当させてもらっているNHK BSプレミアムの
「ニッポンの里山」という番組では、
ごんぎつねの舞台を彷彿とさせる、いくつもの里を訪れてきました。

kitsune 青森県の畑で見つけたホンドギツネ


そういうところでは、キツネはもちろん野生動物によく遭遇します。
私個人は(番組としても)、
昔話の世界に入り込んだようで嬉しいのですが、
そこで暮らす農家さんからすれば「かわいい」では済まない。
電柵を張ったり、空砲を撃ったりして、
農作物が荒らされないように守っています。

それでも、ケモノに少しだけ農作物をお裾分けして、
うまく折り合いをつけながら暮らす人も多くいます。
ケモノが山のサイクルを保つ一員であることを知っているし、
健康な山や土、水があるからこそ、
人の暮らしが成り立つことを体感しているからでしょうね。

そんな暮らしが、この日本で果たしていつまで続くのか?
「古民家に移住」とか「のんびり田舎暮らし」とかって、
外側にいる人間の言葉だなぁ、とつくづく思います。
絶対、のんびり出来ないって・・・
古民家の維持だって、莫大な費用と手間がかかるし。

日本人の自然観を未来に残すにはどうすべきか、よく考えます。
都会で生まれ育った子どもたちに、ふるさとの概念が分かるかなー?
分からないからダメってことはないけど・・・
ふるさとが消えるのは、やっぱり寂しいかも。

kouwa 
職業講和にて


先日、中学生に仕事の話をする機会を頂きましたので、
自然番組を見てもらったり、クイズを出したりしました。
年齢以上にしっかりと捉えてくれたことが本当に嬉しかった。
新美南吉が描いた世界が、
完全なファンタジーになってしまわないことを願いつつ。
慎ましく、番組作りを続けます。


ついに先日、大型商業施設が出来てしまった我が地元ですが、まだまだド田舎。
実家の庭では、今年もタヌキが冬越しの準備をしています。
まきた まりこ