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『新しいがん治療薬を作った先生に 12年ぶりに番組出演してもらった件』2022年11月18日

私は、NHK Eテレで放送中のサイエンスZEROのディレクターをしています。1997年からだから、なんともう15年。自分でもびっくりです。

※サイエンスZEROのHPはこちら

そんな私が最近担当したのが「ウイルスでがんをやっつけろ!最新治療の新戦略」(2022年10月9日放送)という番組。去年保険適応になった、悪性脳腫瘍の治療薬を開発した、東京大学医科学研究所の藤堂具紀教授にご出演いただきました。
この薬の画期的なところは、ウイルスが増殖する力を使ってがん細胞を殺す、というところ。遺伝子操作で正常細胞では増殖せず、がん細胞だけで増殖するという、驚くべきウイルスを薬にしたのです。

最初にこの治療法を知ったのは、今から12年前。
何かの記事を読んで「ウイルスでがんが殺せるの!?」と驚き、なんとかして番組にしたいと藤堂さんの取材にうかがったのですが、開口一番、「ぼくはテレビには出ないから」と言われたのでした……。
それでもなんとか番組の主旨を説明したところ、ご出演を快諾してくれることに!実は藤堂さん、当時の番組MCの大ファンだったのです。
このときはまだ薬にするための臨床試験が始まったばかり。どんな薬なのか?どうやってがん細胞を殺すのか?丁寧に説明してもらう番組になりました。

それから12年。ようやく薬として販売されるようになったということで再び番組にご出演していただくことに。
日本で新薬を作る。しかもそれがこれまでにない働きの薬だったため、前例のないものを許可することに躊躇する国側との折衝の大変さなどもお話いただきましたが、30分の番組に全てを入れ込むことはできず、残念な気持ちも残っています。でも、1人でも多くの患者さんを救いたいという藤堂さんの熱意が伝わるものにはなっていたと思っています。
また、悪性脳腫瘍だけではなく、他のがんにも副作用が少なく効果が高い可能性があり、治験などが進んでいるところも、12年の着実な歩みを感じました。

科学は、日一日と進歩していきます。その長い歴史の流れを番組で紹介できることに私は喜びを感じています。ご覧いただく方々にも、そうした連綿と続く科学の進歩を感じていただけたら嬉しいです。

さて。写真を載せてくれと頼まれていますが、サイエンスZEROのディレクターは基本的に1人で黙々と作業をするので、仕事中の写真なんぞ探してみても1枚もない……と思ったら、1枚見つかりました!
これは朝のニュース番組の特集コーナーを担当したときに、自分で原稿を読む様子。プロデューサーがこっそり撮ってくれていたのでした。ちなみに、ディレクターが自分で原稿を読んで、それが放送で流れることは滅多にないことなのですよ。

髙山晶子 サイエンスZEROは2023年4月で放送開始20年!一番多く制作したディレクターになっちゃいました。